Stage A・B患者へのアプローチ

I. 心不全の危険因子に対して治療介入し、Stage Cへの進行を予防する

心不全は、生活習慣の改善・心不全の危険因子に対する適切な治療介入により、心不全予備軍(stage A・B)から顕性心不全(stage C・D)への進行を予防できます。各危険因子への介入に関してガイドラインで以下のように推奨されています。

  1. 高血圧:減塩、減量、降圧薬(ACE阻害薬、ARB、利尿薬、β遮断薬など)によって治療する。
    サイアザイド系利尿薬は心不全発症予防効果が高い。
  2. 糖尿病・肥満:SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン、カナグリフロジン、ダパグリフロジン)、禁煙、節酒、減量、運動を推奨する。
  3. 冠動脈疾患:ACE阻害薬、スタチンを投与する。心筋梗塞後(特にLVEF≤40%)にはACE阻害薬、β遮断薬、スタチン、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬を投与。
  4. 喫煙者:禁煙治療を強く推奨する。
  5. 飲酒者: 適量の飲酒習慣を勧める。

II. 急性非代償性心不全の発症前にStage BからCへの移行を同定(診断)する

運動負荷心エコー・右心カテーテル検査によってStage BからCに移行する患者(初期のStage C)を早期診断することが可能です。特に労作時呼吸困難患者では軽微なBNPの増加であっても初期心不全である可能性があります。この初期の心不全患者を見逃さないため下記の診断アプローチを推奨します。

診断アプローチ

診断アプローチをPDFで開く

 

Stage C・D患者へのアプローチ

I. 適薬物治療や至適非薬物治療を確認する

HFrEFにおける推奨クラスI:

  1. ACE阻害薬(禁忌を除く無症状も含むすべての患者)/ARB(ACE阻害薬に忍容性のない患者)
  2. β遮断薬(有症状の患者への予後改善目的)
  3. ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)
    (ループ利尿薬、ACE阻害薬投与下でNYHAII度以上、LVEF35%未満)
  4. ループ利尿薬、サイアザイド系利尿薬(うっ血の症状あり)

II. 心不全がどのような病気か、心不全の症状と対処方法、日常生活での注意点を教育する

ポイント:

  1. 心不全がどういう疾患であるかを患者さんに説明する。
    心不全手帳を用いて、心不全は付き合っていく疾患であること、現実には10人のうち2、3人が一年以内に再入院している現状を説明する。
  2. 心不全手帳を用いて、心不全が増悪する時の症状を教育する。
  3. 心不全手帳を用いて、心不全兆候を見つけるcheck pointを教育する。
  4. 薬を確実に飲めているかの確認と、内服の必要性を指導する。
  5. 運動、減塩、禁煙、アルコールの節制、ワクチン接種を励行する。

III. 心不全有症状の場合の対象法

以下の心不全兆候が認められた場合に、患者さんに数日以内に医療機関を受診するように指示する

※心不全手帳の黄色に該当

  • 体重増加:3日以内に2㎏以上増えた時、あるいは○○以上に増えた時
  • 体動時の息切れ
  • 下肢の浮腫

以下の心不全症状があった場合には直ちに医療機関を受診するように指示する

※心不全手帳の赤色に該当

  • 横になると息切れ、起坐呼吸

もし有症状となり来院しましたら診察と対処を検討する

  1. 心不全かどうかの確認
  2. 軽度の心不全であればフロセミド20㎎/40㎎ 1T屯用や処方し、減塩を徹底
  3. これでも悪化する場合や初めから入院が必要な場合には入院可能施設へ紹介

群馬県心不全連携 2020年11月17日

関連資料

心不全健康管理手帳(令和3年4月1日発行 第1版)